近年東南アジアのファッションマーケットを牽引するタイ。今回はそんなタイ・バンコクにアパレル製品の仕入れで行ってきたので、実際にそれぞれの仕入れ先の市場がどうだったのか、レポートしたいと思います。
今後タイに仕入れに行ってみたい、バンコクに仕入先を拡大したい、という方により効率的に回って頂けるような内容になれば嬉しいです。
目次
バンコク仕入れ旅の目的
今回の仕入れの目的は、メンズのトップスです。トップスを選んだ理由は色々あるのですが、
- タイは年中温暖な東南アジアに位置するため、Tシャツやシャツの供給が多く、質も高い
- 比較的安価な商品の方が販路を問わないため、様々なチャネル・プラットフォームに出品をし易い
- 自分が男なのでウィメンズはよくわからない
といった考えで、タイ・バンコクへ渡航しました。
とは言え、前情報でタイのファッションで注目されているのは基本的にウィメンズで、男性はそもそも衣服を着ないような人も多い。みたいな内容も読んでいたので、正直良質かつ日本の男性にも受け入れられるようなデザイン性の高いメンズアパレル製品が見つかるかどうかは不安でした。
訪れた市場一覧
今回足を運んだ卸市場は4つです。
EXPORT SHOP
世界中のアパレルバイヤーが買い付けに来るお店
という記事を読んで、これは行ってみたい!ということで一番最初に訪れた場所です。
バンコク中心地より東に位置しています。
ボーベー市場
バンコク中心地より西部にある大卸市場エリア
バイヨークスカイ
バンコク中心部より少し北にあるバイヨークスカイタワーに入っている卸市場です。
プラティナム
バイヨークスカイタワーのすぐ近くにある、プラティナムマーケットとプラティナムモールを有する卸市場エリアです。
これら市場の地理関係は、こんな感じになっています。
バンコクにはスカイトレイン(BTS)という、バンコクの中心を横断する中央線みたいな線路がありますが、そのスカイトレインの中でも特に大きなサイアム駅(中央線で言うと新宿でしょうか)を中心とすると、これらの市場が東西に散らばっているのがわかるかと思います。
私は今回
- EXPORT SHOP
- ボーベー市場
- バイヨークスカイ
- プラティナム
という順番で一日かけてまわりました。もしこれら全て回るということなら、仕入れた商品をホテルに持って帰ることを考えと、なるべくサイアムやチットロム近くのホテルに滞在するのが便利だと思います。
各卸売市場早見表
そんなに沢山移動したくない、という方もいらっしゃると思いますので、まず各市場の比較表をご覧頂こうと思います。
各項目5段階評価です。
市場名 | 広さ | 価格帯 | 品質 | オススメ度合い |
---|---|---|---|---|
EXPORT SHOP | 1 | 2 | 0 | 1 |
バイヨークスカイ | 2 | 3 | 3 | 3 |
ボーベー市場 | 5 | 5 | 1 | 2 |
プラティナム | 3 | 3 | 5 | 5 |
ということで、結論としてはほぼプラティナム一択だと思います。
ひとつづつ、どんな卸市場なのか、実際に訪れた順番に詳しく見ていきたいと思います。
EXPORT SHOP
まずはラムカムヘン駅にあるEXPORT SHOPを目指しました。この店はタイに倉庫を置く外資系のアパレル企業の売れ残り、つまりアウトレット品を中心においてあるということで、日本ではなかなか手に入らなかったり高額だったりするものがある、掘り出し物探しの場所という前情報を仕入れていました。
ただ、場所に関してラムカムヘン駅から南に1、2分歩いたところにあるという情報しかわかっていなかったので、最悪見つからないかも、、と思って向かいました。
ラムカムヘン駅から見える景色はこんな感じで、商業施設を色々建設しようとした跡はあるものの、そこまで栄えていない、地元の方が大勢いるような駅です。
駅を降りて南に向かって、のみの市等を横切りながらしばらく進むと、全然アパレル用品を扱っているような店がありそうな気配はしない中突然、
あった!EXPORT SHOP!
住所としては Khwaeng Suan Luang, Khet Suan Luang, Krung Thep Maha Nakhon 10250 辺りです。
あまり頑張って探しながら歩かなくても、ふとした小路の奥に突如現れるので、普通に見つかると思います。
やれやれと思い勇み足で中に入って、ざっと商品を物色してみます。しかし、どうやらこのお店様子がおかしいようです。
店内に入って見渡してみると、結構広い店内に所狭しと洋服がひしめき合っているのですが、ちょっとよく見てみると、商品の質があまりよくないようでした。
こちら、2階のレディースの商品が置いてあるフロア。ここも商品が大量に積まれているだけで、あまりパッとしません。
全体的には、
- どの商品もヨレヨレ。古着レベルのコンディション
- 聞いたこともないブランドが大半
- お客さんもタイ国外のバイヤー?らしき人がちらほらいる程度
といった状況で、やっと見つけたと思ったブランド商品も、どう見ても偽物、もしくはブランドのラベルが切り刻まれている!という不可解な状態でした。わかりやすい例で、TOMMY HILFIGERのシャツらしきものがありました。
一見、「お、ようやく良さそうな品物かな」と思うのですが、
よくよく見てみると、
なぜかラベルの前半が破り取られていて、残りの半分もHILFIGERのはずがHILFIGEと書かれていました。
このような形でこのEXPORT SHOP、一般的なブランドのラベル(GAPやRalph Lauren等も)は全て破かれているか、サインペンで上から消されている。もしくは明らかに偽物だとわかるような作りになっていて、とても仕入れられるようなものではありませんでした。
どういった経緯でアパレル製品がこのショップに運び込まれたのかは分かりません。偽物が流れ着き、偽物とバレないように細工をされたか、あるいは本物だけど裏ルートで流れ着いたためブランド側にバレないように細工をされたか、いづれにしろ仕入れの対象になるような商品はなく、ここはさながらアパレルの墓場といった様相を呈していました。
これがタイの洗礼か、と私は肩を落としてEXPORT SHOPを後にしました。
ボーベー市場
次に向かったのはボーベー市場です。EXPORT SHOPからは東西に移動しないといけないので、エアポートレールリンクでラーチャプラーロップ駅まで移動し、そこからタクシーに乗り換えました。ラーチャプラーロップ駅からタクシーに乗ること15分ほど、ボーベー市場に到着しました。
ボーベーは今回行った中では一番広い、本当に広い卸市場のエリアでした。
全てを回れたわけではないのですが、私が回った感じだと大きく3つのエリアに分かれるような作りになっていて、地図に描くとこんな感じです。
3つのエリアを一つづつ見ていきたいと思います。
川と線路に囲まれたエリア
2つの川、そして線路に隔たれたエリアに卸売店が百店舗ほどでしょうか、軒を連ねています。
このエリアはタイパンツ等比較的エスニックなアパレル用品が多くおいてありました。
天井が半分屋根になっていて少し薄暗く、かなりドープな雰囲気です。
ボーベータワー
ボーベー市場の本命、ボーベータワーです。このボーベータワーは1階から6階まであって、1階から5階はメンズレディース問わず洋服を. 6階が雑貨・小物を扱っていて、ここも数百店舗規模でテナントが入っています。
上層階はプリンスパレスというホテルが入ったビルですが、上にホテルが入っているとは思えない程、問屋がひしめき合う卸タワーでした。
ボーベータワー周辺
ボーベータワーというビルの周辺に、卸の路面店が数百店舗規模で溢れかえっています。
このあたりは本当に色々な卸売り店舗がありますが、デニムから下着、子供服等衣類はもちろん、家電の部品やインテリアグッズまで、商材問わずとにかく大量に店があります。
ボーベータワーに近づくにつれて少しブランド店っぽい店舗が増えていくのですが、試しにとあるデニムの店舗に入ってみたところ、Levi’sのレプリカ品がおいてありました。
ボーベー市場総評
ボーベーはとにかく店舗がものすごくあり、価格もTシャツ等が100THBほどからと、とても安価です。
しかし、商品のクオリティは全体的に低く、低品質かつデザイン性も低いというのがほとんどでした。
日本のマーケットで真っ当に販売しようとしてもなかなか難しいと思い、再び肩を落としてボーベーを後にしました。
バイヨークスカイ
次に向かったのはラーチャプラーロップ駅からすぐ近くにあるバイヨークスカイタワーです。このタワーもボーベータワーのように、上部にバイヨークスカイホテルというホテルやオフィスフロアが入っている高層ビルです。
このバイヨークスカイタワー、1階から4階にアパレルの卸売り店舗が多く入っていて、卸売り市場としても有名です。
卸業者のテナントが入っている階でも、1~2階と3~4階で店舗の雰囲気や扱っている商品が大きく異なるので、分けてご紹介します。
1~2階
この階はかなりボーベー市場に雰囲気や品揃えが近く、安価ですが質は高くない商品を扱うテナントが多く出店しています。ボーベー市場同様にメンズはほとんどの店がTシャツ、シャツ、短パン等を扱っていました。
3~4階
この階はかなり独自の色をもったタイ国内のブランドが多く出店していました。1~2階と比較すると価格帯は高いのですが、品質も良く、デザイン性も高かったです。品揃えも、夏服に加え、ニットやジャケットなどの商品も扱っていたので、バイヨークスカイビルはむしろこのフロア目当てに行ってみるのがいいかと思います。
中には柄物で派手な国内ブランドなどもいくつかあり、とても目立っていました。
目立ちすぎて柄物を扱う店舗の写真をいくつか撮ったので、掲載しておきます。
こんな感じで、ディスプレイも凝っていておもしろい現地ブランドが店舗を構えていました。
バイヨークスカイ総評
バイヨークスカイはボーベー市場と比較すると店舗数が少ないですが、
- 安価な商品は店舗毎にあまり変化が無いので、店舗数の多さはそこまで重要ではない
- 3~4階のテナントの独自性が高い
- バンコクの中心地に近い
ため、ボーベーよりはおすすめです。
サイアム等近くに滞在する場合は足を運んでみてもいいかと思います。
プラティナム
最後に向かったのはもちろんここ、プラティナムです。
この記事を読んで頂いているような方はもちろんご存知だと推測されるくらい、バンコクの卸売り市場といえばここ!という場所です。
プラティナムのエリアには、路面店が集まっているプラティナムマーケットと、大型商業施設の中に大量にテナントが出店しているプラティナムモールの2つがあるので、順番にご紹介します。
プラティナムマーケット
ここは路面店の集合ということで、ボーベータワー周辺の路面店が集まるエリアに雰囲気が似ています。商品的にはアパレルもありますが、化粧品や健康食品、民芸品、アクセサリー等を扱っている店も多かったです。エスニックなタイならではの商品を仕入れる場合は行ってみてもいいかもしれません。
プラティナムモール
6階建てのビルの各フロアに数多くのアパレルテナントが出店しています。基本的にウィメンズなのですが、4階のみまるごと1フロアがメンズ商品になっています。
価格的にはボーベーやバイヨークスカイビルの1~2階と比較して高いですが、全体的な質やデザイン性はとても高く、さながらタイの新興アパレルブランドが集まっている、という雰囲気です。店舗数は4階だけでも数百件はあるため、Tシャツ、シャツ、下着、パンツ、ジャケット等様々な製品を専門で扱っているお店が多く、複数種類のアイテムを大量に仕入れる、といった場合にも向いていると思います。
例えばこのJACK’Sというお店はシャツの専門店ですが、素材や裁縫等特に問題はなく、普段使いとして着てもなんら問題の無い品質の商品を扱っていました。
プラティナム総評
やっぱりバンコクアパレル仕入れはプラティナムモールでしょ、という前評判通り、プラティナムモールの品揃え・品質・デザイン性は今回訪れた他の仕入れ市場の中で一番高かったです。立地も市内中心部に近いので、仕入れ目的で渡航するだけでなく、旅行でバンコクを訪れる際にも、ふらっと立ち寄って見ることをおすすめします。
そして、最高のシャツブランドに出会う
というわけで、今回は最後にたどり着いたプラティナムモールで、素晴らしいブランドや製品に数多く出会うことが出来ました。
しかもなんとその中に、これは日本の大手セレクトショップで1万円で販売していてもおかしくないレベルだ!というくらい高品質かつデザイン性の高いシャツを販売しているシャツ専門ブランドがあり、今回の買い付け旅はこの発見が一番の収穫になりました。
こちらが今回仕入れた商品の一部です。当サイトで販売していますので、気になった方は是非チェックしてみてください。
また、このブランドに関してはこちらの記事にてご紹介しています。タイのドメスティックブランドのレベルの高さに興味がある方は、是非読んでみて下さい。