良いシャツの見分け方|高級シャツの条件は仕立てが9割


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ブランド・仕立て・生地・デザインなどなど、メンズシャツを高級たらしめる要素には様々なものがあります。今回はその中でも、このポイントが押さえられているものは普遍的に良いシャツと言える、といったポイントをまとめました。セレクトショップや百貨店、オンラインショップなどでシャツを探す時に、より珠玉の一品を探せるよう、参考にして頂けると幸いです。

この記事における良いシャツ・高級シャツの定義

今回は良いシャツや高級シャツの定義を、シャツの生地・材料・仕立て方法の中で、一般的にシャツの質を上げると考えられているものに絞ってご紹介します。

ブランドやデザインなどはシャツの価格を左右するとても大きな要素ですが、ブランド物だからといってかならずしも細部までこだわった作りであるとも限りません。また、デザインもドレッシーなデザイン・フォーマルなデザイン・ビジネスに向いている機能美を備えたデザイン・カジュアルなデザインなど、シャツを着用するシーンによって良いとされている、もしくは好ましいとされているスタイルが異なります。さらにデザインはイギリスの伝統的なスタイルやアメリカントラディショナル、イタリアの艶っぽいスタイルなど、シャツが目指している方向性によっても大きく異なってきます。

では、一般的に良いシャツ・高級なシャツと考えられる条件はどういったものでしょうか。
例えば、下着を着用せずに直接着られるくらい滑らかな肌触りは良質な生地に寄る所が多く、高級なコットンや丁寧な織り方が求められます。また左右対象にバランス良く整えられた仕立てや、身体にフィットするように立体的に作られたシェイプ等、職人が一手間も二手間も要するような、言わば面倒な工程を積み重ねたようなシャツはより高級とされます。

今回はこのようにTPOや目的によって価値基準が変わるものではなく、より普遍的に良いとされているポイントを13個ご紹介します。

きめ細やか・滑らか・光沢がある、高品質な生地

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やはり良いシャツ・高級シャツの条件として真っ先に挙げられるポイントは、用いられているシャツの生地です。シャツ全体を構成する要素であり肌に直接当たるため、良い生地を使っているかどうかは、シャツの見た目や着心地を左右します。

いい生地の特徴としては、
・柔らかさ
・しっとり感
・自然な光沢
・耐久性
・毛羽立ちにくい
といった点が上げられます。

良い生地はもちろんコットン(綿)100%を使っていることが前提になりますが、さらに使っている糸や生地の織り方によって質が変わってきます。

より細く、しかし耐久性を落とさない糸

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糸には太さを表す『番手』という数値(単位)があり、この番手が大きくなるほど糸が細くなっていきます。細い糸を寄り集めて作った生地の方が表面がきめ細かく滑らかになるため、より心地よい肌触りや光沢が生まれます。さらに、番手が大きくなる、つまり糸を細くするには加工するために高い技術が求められるため、小さい番手よりも手間がかかりその分費用がかかります。

通常のシャツの場合50番手や60番手といった太さの糸を用いますが、高級生地では80番手、100番手、120番手、300番手といった細い糸を用いた生地を使うことが多く、やわらかく風合いや肌触りの良さが特徴です。

また、糸には『単糸(たんし)』と『双糸(そうし)』という種類があります。単糸は一本の糸をそのまま織るもので、双糸は二本の単糸を撚ったものを一本の糸として織るものです。

細い糸になるほど生地が薄くなるため耐久性が落ちてしまいますが、高級生地の場合は双糸を用いることでこの耐久性の低下を防ぎつつ、綿のきめ細やかさを実現しています。

高級な糸の原料は『超長繊維綿』

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また、原料である綿にどの種類が使われているか、も良い糸や良い生地のためには重要な要素です。細く美しい糸を作るためには白くて細く、より繊維の長い綿の方が向いており、綿の中でも高級とされています。

綿にはその繊維の長さから3種類に分けられていて、それぞれ
・短繊維綿:繊維の長さ2cm以下
・中繊維綿:繊維の長さ2cm〜2.8cm
・長繊維綿:繊維の長さ2.8cm以上
と呼ばれています。

さらにこの長繊維綿の中でも繊維が3.5cm以上のものが『超長繊維綿』と呼ばれていて、収穫できる原産地が限られているということもあり、高級な糸や生地に用いられることが多いです。代表的なものとしては、エジプトの『ギザ綿』、カリブの『カリビアンコットン』、中国の『新疆綿(しんきょうめん)』、アメリカの『スーピマコットン』といったものが上げられます。
このあたりはシャツを購入する時に店員さんに聞いたり、商品名に記載されていることもあるのでそういったものを確認して、高級なシャツかどうか判断する材料に出来るかと思います。

グッと上をむいてしっかりと立つ、美しい襟周り

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シャツの顔は何と言っても襟周り。顔に一番近い部分ということもあり、パリッとした襟周りのシャツだととてもいい印象を与えてくれます。襟はレギュラーカラー・ワイドスプレッドカラー・ホリゾンタルカラー・ボタンダウン…と様々な形の種類があったり、それぞれの種類の中でも襟先の長いタイプや短いタイプなど千差万別のスタイルがあります。

これらのスタイルはフォーマル向き・ビジネス向き・カジュアル向き等TPOによって使い分けるもので、一概に良い悪いを判断出来るものではありません。しかしどんなスタイルでも、襟がしっかりと立ち洗濯やクリーニングを繰り返しても綺麗な形を維持できるものが高級と考えられています。
特にノーネクタイで着用する夏場のクールビズスタイルやカジュアルテイストのシャツの場合、ネクタイが襟を持ち上げてくれるということがないので、そのままでもしっかりホールドされるかどうかが重要になってきます。

しっかりと立つネクタイにはいくつかの条件があります。

上向きにカーブした襟台

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襟の根本の部分を襟足と呼びますが、この襟足が写真のように上向きにカーブをして仕立てられていると、着用したときに自然と襟が上向きになります。
シャツは元々1枚の生地から様々なパーツを切り出し、それらを組み合わせることで制作されますが、このように襟を立てるため・もしくは身体にフィットするための立体的な作りは長年の研究や伝統の産物であり、高級シャツでは随所にそういった工夫が見て取れます。

この襟足にはシルエットを美しく保つための副素材である接着芯が貼られることが多いです。しかし首に直接当たる襟足の内側に堅い接着芯を貼ると着心地を悪くしてしまうので、イタリアの高級シャツなどでは襟足の外側に接着芯を貼る、といった手法が取られることもあります。

また、接着芯より高級な仕立て方法にフラシ芯というタイプの芯地もあります。これは接着剤を使わずに生地の表地と裏地の間に芯地を縫製のみで付けるもので、こちらも肌に直接触れることなく、加えて自然な風合いを醸し出せます。このフラシ芯は手間がかかり高度な技術が必要になってくるためなかなかお目にかかることはできず、高級シャツのポイントの一つと言えます。

まっすぐに伸びた丈夫な前立て

襟元のボタンから一直線に伸びる前立ても、襟をパリッと立てるために大事な要素です。この前立てがまっすぐで、縫製のラインと前立てのラインがしっかりと平行であることはもちろん、前立にもちゃんと芯地が入っていると襟元がよれずに襟を持ち上げて、そのままホールドしてくれます。

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1インチに24針以上の、密な運針

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運針という、1インチ(2.54cm)内にいくつ縫い目があるかを示す指標も、高級シャツを見分ける一つの指標。通常のシャツが14~20針という運指の数なのに対して、良質・高級なシャツの場合は24針以上のケースが多いです。

運針数が増えるということはその分ミシンで生地を縫い付ける回数が増えるということで、裁縫のスピードが遅くなり、綺麗な直線を縫うのも技術的に難しくなっていきます。その分ほつれにくく耐久性は増すので、より手間をかけたクオリティの高い仕立てポイントの一つと言えます。

このあたりは本当に気を付けて商品を見ないと違いの分からない部分ではありますが、そんな一見地味な箇所でも手を抜かない職人や工場の思いが詰まっていると考えると、洗練された一着という印象を強く持たせてくれます。

ガゼット(ガジェット)が付けられている

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ガゼット(ガジェット)とは、裾の前身頃と後身頃が合わさる部分に取り付けられる小さなパーツで、ムーシェやピースとも呼ばれています。強度の弱いつなぎ目を補強する目的で取り付けられ、洗濯時などのほつれを防ぎ、パンツの中での引き連れを防止する役割があります。
現在の高い製法技術では正直そこまで必要のないパーツではありますが、細部まで徹底的に凝った高級シャツの場合、このガゼットが付いているケースが多いです。

写真のものは三角形のガゼット(ガジェット)で、この他にも五角形や六角形、まれに四角形の形状のものもあります。

ピッタリと合ったスプリットヨーク

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背中の首から肩周りの部分をヨークと呼びますが、このヨークが2枚の生地をつなぎ合わせて仕立ててあるものをスプリットヨークよ呼びます。

一般的なシャツの場合、効率性を重視してヨークは1枚の生地のみで仕立てます。しかしこれだと生地が背中の曲線に合わず、着心地やシャツの持ちに悪影響を与えてしまいます。高級なシャツではそういったことのないよう、2枚の生地を肩の方向に合わせ斜めに切り替えし、運動性を高めて良い着心地を実現します。

このときにポイントになるのが2枚の生地を縫い合わせるヨークの中心。特にストライプシャツの場合は、この中心線を堺に綺麗に左右対称になり、柄がピタッと合うように仕立てられたシャツ。そんなシャツが高品質であると考えられています。

また、スプリットヨークだけでなく肩の部分のつなぎ目やカフスから伸びる剣ボロなど、生地と生地を合わせる部分を確認していただくと、より高品質なシャツほど柄がしっかりと合っているのがわかるかと思います。

肌にストレスを与えない折伏せ縫い

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良い仕立ての場合は外から見える部分だけでなく、内側の様々な部分においても細かな気をつかって作り上げられています。
特に袖から脇にかけて袖を合わせるための縫製や、前身頃と後ろ身頃を合わせるための縫製に『折伏せ縫い』という手法が用いられていると、より着心地がよくなり高級シャツとしての風合いが増します。

この折伏せ縫いとは、縫い代の片方を細く切り落とし、もう片方の縫い代で包む様にアイロンをかけ、その上からミシンで押さえる方法です。この手法の縫製を施すと縫い目の強度が増すため、着用・洗濯を繰り返してもよれにくくなるといった効果があります。
また、腕や脇など直接シャツに当たる部分がスムーズな縫い目になるため、肌にストレスを与えずスッキリと着ることが出来ます。

カフスに施された美しいプリーツ

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プリーツとは衣類の様々な箇所に作られるひだを意味します。衣類のシルエットを崩さずに部分部分に余裕をもたせることで、動きやすさやゆったりとした着心地を与えてくれます。

シャツに多いのは、背中のヨークから縦に2本入れるサイドブリーツとカフスの上の部分につけるプリーツ。サイドプリーツは肩周りを動かしやすくしてくれますが、高級シャツの場合はジャケット着用時のジャケットとシャツの間に起きる摩擦を抑えるという意図で、あえて背中にはサイドプリーツやセンターボックス・ダーツを設けない、といった考えもあり、デザインや用途によって変わってくる部分です。

カフスにあしらわれるプリーツの場合は、多く入っている方が一般的には手が込んでいて高級と考えられていています。海外製のシャツにはカフスの内側と外側両方に複数本プリーツが入ったシャツなどもあり、かなりドレッシーな雰囲気のテイストに仕上がっています。

貝から作られた上品なボタン

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高級なシャツには貝から作られたボタンが用いられているケースが多いです。貝は天然の材料なので希少性が高く、ボタンの材料として最も用いられやすいプラスチックと比べると大きな価格差があります。さらに貝ボタンは衝撃に弱く、乱暴に扱うとすぐに割れてしまう恐れがあります。

そんな機能性に乏しい貝ボタンですが、天然の素材にしか出せない微妙なテイストや上品な光沢、ややざらざらとした質感からボタンが留めやすいといった点から、高価で質の高いシャツには好んで用いられます。さらにプラスチックよりも熱に強いため、アイロンやクリーニングのプレスで傷んだり溶けてしまうといったことがないのも貝ボタンのメリットです。

貝ボタンはパッとみただけだとプラスチックのボタンと見分けるのが難しいですが、堅いものでコツコツと叩いてみると金属音のような高音を出すのが特徴です。もろい素材なので壊れない程度の力で試して頂ければ、ボタンの種類がわかるかと思います。

万が一のためのスペアボタン

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また、ボタンが壊れてしまったり外れてなくなってしまった時のために、スペアボタンが備え付けられていると、長く着て欲しいという作り手の気持ちが伝わります。

特に高級シャツの場合貝ボタンが採用されているケースが多いので衝撃に弱く、壊れやすくなりがちです。そのような場合でも写真のように、襟元用の一回り小さいボタンとそれ以外の通常サイズのボタンが一つづつスペアとして付いていれば安心して長く愛用することが出来ます。

最後のボタンホールは横向きに

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さらに、前立てのボタンホール(ボタンを留めるための切れ目)のうち、一番下にあるボタンホールのみ水平に切り込みが入っているものがあり、これも一手間を加えられているということが見て取れるポイントです。

この方法の理由としては、ボタンホールを水平にすることによってお腹周りに微妙に膨らみを持たせること、そして一番下のボタンなので『このボタンが最後』という目印にして留め忘れを防止する、といったことが挙げられます。

また、ボタンホールは通常は四角く縫製されますが、四隅を丸めてやや楕円系のような形で裁縫されることもあり、高級シャツならではの美しい仕上がりになります。

ボタンを留めやすくする千鳥掛け

滅多にない究極の一工夫に『千鳥掛け』というボタンを留める手法があります。これは通常は4つ穴ボタンにクロスする形で糸を通して留める、もしくは平行に二本糸を通して留める一般的な方法に対して、写真のように鳥の足のように一点を基点として、他の三点それぞれに糸を通す方法です。

ミシンではできず完全に人の手で一つ一つボタンを付ける必要があり非常に手間のかかる手法ですが、ボタンに若干の傾斜がつくことでボタンが付けやすくなる、という効果があります。

まさに着やすさを究極まで追求した結果の手法。ほとんどの人は気づかないような職人の仕事に、粋な魂が感じられます。

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